東北の伝統工芸品『こけし』とは?(宮城県、他)


丸い頭に円筒状のアンバランスな形状をした伝統工芸品が「こけし」です。一見奇妙な形の物ですが、熱心なコレクターがいるほど人々を魅了する愛らしい顔立ちをしています。素朴でどこか懐かしい伝統こけしを紹介します。

鳴子こけし

こけしの歴史

こけしの歴史は意外と新しく、江戸時代末期頃に東北地方で誕生したと言われています。当時、寒さが厳しい東北の農民の間では、百姓仕事がひと段落ついた冬場や田植えの後、夏の一番暑い時期など、年に2、3回ほど温泉街へ出向き療養する湯治(とうじ)が流行していました。人が集まる温泉街では商売が繁盛するため、木の器を作って旅館などに卸していた木地師(きじし)たちも温泉街の周辺に住むようになります。木地師たちが湯治に来ていた農民たちと交流する中で、彼らが欲しいものを直接知るようになり、温泉地の土産物としてこけしが誕生しました。こけしの彩色には鮮やかな赤い染料が使われていますが、赤は古来より魔除けの色とされ、子供のおもちゃとして人気が出るようになったのです。その後大正時代に入ると西洋風の人形など新しいおもちゃの誕生により、こけしは子供のおもちゃとしての人気は衰えますが、大人の趣味のコレクションとして広がるようになります。元々は子供が持ちやすい太さに作られていた胴も、棚などに立てて展示する場合が多くなったため、倒れにくいように胴が太く作られ、下部に転倒防止用の台を付けるなど形態も変わっていきました。

 

こけしの名前について

こけしという名前の由来は地方によって「木彫りの人形」という意味の『木偶(でく)』から来た言葉(きでこ、でく)、江戸時代中期に流行った「芥子人形(けしにんぎょう)」という人形からとった言葉(こげす、こうげし)等があると言われています。「こけし」の漢字表記も長らく統一されておらず、1939年に鳴子温泉で開かれた全国こけし大会で漢字表記ではなく、ひらがなで「こけし」に統一されました。

 

様々なこけし

東北地方発祥のこけしですが、各地域によってこけしの種類にも特徴が見られます。産地によって作り方や頭と胴の模様の違い、胴のくびれの有無などが見られます。こけしの生産量日本一を誇る宮城県の鳴子温泉で作られる鳴子系(宮城県)といわれる鳴子こけしは頭と胴体が別々に作られているため首を回すと「キュ、キュ」と音が出ることが特徴です。やわらかな顔立ちで頭頂部には前髪と二束に分かれた髪、赤い髪飾り、胴には菊の花が描かれています。

鳴子こけしに次ぐ生産地である宮城県遠刈田温泉で作られる遠刈田系(とおがったけい)のこけしは鳴子こけしより以前から作られており、名人級の職人も多く出ています。頭が比較的大きく、目は上下のまぶたが描かれすっきりとした顔立ちです。胴体には菊や梅、桜などの花が重ねて描かれ、頭頂部にも赤い放射状に広がる花のような髪飾り、額から頬にかけても赤い花びらの模様が描かれています。

その他にも伝統こけしは土湯系(福島県)、弥治郎系(宮城県)、蔵王高湯系(山形県)、作並系(宮城県)、肘折系(山形県)、木地山系(秋田県)、南部系(岩手県)、津軽系(青森県)、山形系(山形県)の全11系統あり、それぞれに違った味わいがあります。日本らしさを伝えるお土産としてひとついかがでしょうか。

※都道府県表記は参考です。

左より土湯系、弥治郎系、遠刈田系、蔵王高湯系、作並系

左より土湯系、弥治郎系、遠刈田系、蔵王高湯系、作並系

左より鳴子系、肘折系、木地山系、南部系、津軽系

左より鳴子系、肘折系、木地山系、南部系、津軽系

こけしだらけの鳴子観光

鳴子温泉はこけしの産地として街の様々なところでこけしが置かれています。駅にはこけしの展示や駅長こけし、道路沿いには巨大こけし、標識にもこけし、こけしポストやこけし公衆電話などなど、こけし三昧と温泉の旅はいかがですか?

 

○岩下こけし資料館

宮城県大崎市鳴子温泉字古戸前80

TEL:0229-83-3725

日本こけし館

宮城県大崎市鳴子温泉字尿前74-2

TEL:0229-83-3600

(noren Ichiro)

伝統を受け継ぐ!女性こけし工人がつくった「猫こけし」(山形県)


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