硝子の伝統工芸品『江戸切子』の魅力


日本では古くから陶器や木で作られた食器が使われていましたが、江戸時代に入ると、海外からガラス製品が大量に広まるようになります。初めは輸入品の販売が中心だったのが、職人を国内に呼び込んで技術を吸収することで、徐々に独自のガラス工芸品を製作するようになりました。江戸切子がまさにその日本製のガラス製品で、特殊な技法で作られた独特な絵柄は、海外のバカラのような印象を与えます。現在は日本の伝統工芸品の一つとして高く評価されており、お土産としても人気を集めています。

 

江戸切子のルーツは

江戸切子が生まれたのは江戸時代の話で、当時の庶民の食器といえば、漆を塗った木や陶器を使ったものが一般的でした。そこに急にガラス製品が送られたわけですが、当然当時はガラス製品を作るノウハウが無く、製造のノウハウを手に入れるまでにはさらに長い時間が必要でした。しばらくするとヨーロッパやアイルランドのガラスの加工法を知る人物を日本に呼べるようになり、最終的には海外の切子細工を参考に、自分たちなりの加工法を見つけ、それらを積極的に普段の暮らしに取り入れようと、新しいガラス製品を次々と開発しました。こうして江戸切子はかつてと比べても、よりオリジナリティが強い日本の伝統工芸品となり、多くの日本人や外国人に評価されるようになりました。

 

モダンなデザインが評価

江戸切子の魅力はなんと言っても落ち着いたモダンなデザインでしょう。江戸切子の元となったイギリスやアイルランドではありますが、日本で江戸切子が見られるようになってからは、時代に合わせたデザインの変更も行われているのに対し、江戸切子はかつてのデザインを可能な限り利用して、綺麗な絵柄を活かしつつも、どこか落ち着いたモダンなデザインを維持して、海外のグラスには無い魅力を感じることが出来ます。特に文様のバリエーションが非常に豊富で、彫られる文様の種類一つで同じような形のグラスなどでも、まったく違う印象を与えてくれます。

江戸切子2

江戸切子が発展した理由は

日本のようにガラスが使われて間もない時代には、江戸切子と同じく、薩摩切子と呼ばれるガラスの製造も行われていました。薩摩切子の生産は残念ながら工房の焼失などが影響して伝統技術のほとんどが失われてしまいましたが、江戸切子は長い時代を経てもその存在が残り、発展を続けてきました。こうした発展の理由はいくつかあり、薩摩切子が工芸品としての製作を目標に掲げ、ごく一部の人たちにしか広まらなかったのに対して、江戸切子は庶民の間でも使えるものとして製作されていたことで、より広い範囲に存在が知られ、多くの職人の輩出につながったことが、現在に至るまで発展を続けられた大きな要因ではないかといわれています。

 

多様な文様と製品のジャンル

江戸切子に彫られる文様は、バカラグラスとはまた違った独特なもので、種類も豊富に見られます。いくつか例を挙げると、魚の卵が連なるような様子から名づけられた「魚子」古くから日本の工芸品で使われた七宝つなぎという文様をモチーフにした「七宝」、竹かごに多く見られる、六角形の網目に似ている「六角篭目」など、他にもたくさんの文様があり、古くから使われている文様もあれば、新しく考案された文様もあったりと、伝統にこだわりつつも、常に新しい形を目指して新しい作品が作られ続けています。また製品自体のジャンルも幅広くそろえており、古くから日本で使われている徳利(とっくり)などの食器や花瓶はもちろん、ビールグラスワイングラスといった洋風の食器や、インテリアやアクセサリなども江戸切子で製作しています。

江戸切子のワイングラス

 

色の変化

江戸切子を語る上で、色の変化も忘れてはいけません。江戸切子を製作する際は、薄い色ガラスを作った後に、色ガラスの内側から透明なガラスを吹き込むことでガラス同士を定着させ、器の形に仕上げた後に、削りを加えることで、色つきガラスを残す部位と透明ガラスを残す部位とで分けて、独特の文様を作り上げていきます。使うガラスの種類や量は勿論、削り方でも完成した器の色のバランスが大きく変わるので、製作者の個性が出やすく、商品のバリエーションが非常に多くなることから、たくさんの製品の中から自分好みの品を選ぶことが出来ます。また江戸時代に作られた江戸切子は、使われているガラスの品質が異なるため、新しく作られた江戸切子とはまた違った味わいが出ているとのことで、市場に出ると高値で取引されることも珍しくありません。

江戸切子は古くから伝わる伝統工芸品ではあるものの、その発祥は海外と深いつながりがあるものです。伝統を守りながらも、新しい物を積極的に取り入れた末に生まれた独特な加工技術によって生まれる江戸切子は、積極的に新しい物を取り入れて自分たちの文化として昇華する日本らしい製品といえます。自分で使うのは勿論、大切な方へのお土産としても購入されているので、興味がある方は是非どんな製品があるのかチェックしてみてください。

(noren Ichiro)

“すみだガラス市2016”錦糸町で4/16,17日開催‼︎


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