日本の伝統工芸! 木工品『組子(くみこ)』とは?


西洋のレースのような美しく繊細な組子(くみこ)は、古くから日本の建築に装飾として施されてきました。組子を作るには非常に高度な熟練した技術が必要で、1人前の職人になるには10年以上かかると言われています。和室離れが進んだ現代の日本では触れる機会が少なくなってしまいましたが、新しい商品の開発にも力を入れ、その魅力を後世に伝えようとしています。美しき伝統工芸「組子」の世界を紹介します。

 

組子(組子細工)とは

組子は組子細工とも呼ばれ、小さく切り出した木片を、釘を使わずに組み合わせて美しい幾何学模様を描く工芸品です。木片の切り出しから行い、各パーツには組み合わせる際にパーツ同士を噛み合わせるための溝を彫ります。切り出したパーツをカンナやノコギリ、ノミなどを使って調整し、一切釘などの金属を使わずに丁寧にひとつひとつ手作業で組み合わせていきます。木を組み込んでいく工程は紙1枚の厚さでもずれてしまうと組み付けが出来なくなるほどの細かい作業で、熟練した職人の技術と木を知り尽くす知識が無いと作ることができません。

日本家屋の中で使われる障子(しょうじ)や(ふすま)、戸などの建具の装飾として使われており、木を組み合わせてできる模様の数は200種類を越えると言われます。

障子(しょうじ)

障子(しょうじ)

 

組子の歴史

組子は古くから建築物の装飾として使われ、現存する最も古いものは飛鳥時代に建てられた法隆寺金堂(こんどう)や五重塔などの高欄(こうらん)に施されたものです。このことから、組子は中国より仏教建築の一部として伝わったのではないかと考えられます。平安時代末期には建具が貴族の暮らす寝殿で使われるようになり、更に発展したのが書院造りの建築が流行した室町時代に入ってからです。障子の桟(さん)などに細工を施すようになり、使う道具も発達したことによって装飾もより細かく美しいものへと進化します。現在使われている模様のほとんどは江戸時代に生まれました。

五重塔 高欄

五重塔 高欄

 

様々な組子の模様

美しい幾何学模様が特徴の組子には基本のパターンが大きくわけて2種類あります。菱型を中心とした組子細工の基本とも言えるデザインの「菱組子」と、縦横に規則正しく格子状に組み合わされた「格子組子」です。この2つのデザインを基本とし、空き部分に細やかなパーツを組み込んでいきます。

また、作られる模様の中には意味が込められているものもあります。伝統的なデザインで植物の麻をモチーフにした「麻の葉」は、葉が真っ直ぐに成長することから子供の成長を祈願する願いが込められ、魔除けとしても用いられます。健康祈願には「胡麻柄」が使われます。釣鐘状で可憐な形をした胡麻の花をモチーフとし、胡麻が栄養豊富なことが由来していると言われます。昔ながらのデザインは植物の他に、亀甲柄などの縁起が良いとされる柄を組み合わせたものもあり、組子の小さな柄の中には大きな願いが込められています。

 

現代の生活にもマッチする組子

建築様式の変化により、現代では和室を設けない家もあって障子や襖といった建具の需要も少なくなりつつあります。しかし、繊細で木のぬくもりを感じられる組子細工は床張りのリビングにインテリアとして置いても違和感のない、洗練されたデザインの商品もたくさん登場しています。
手軽に取り入れるのであれば、可愛らしく実用的なコースターなどから使い始めることをお勧めします。組子で作られたランプシェードを間接照明や天井照明に使えば、模様の隙間から零れ落ちるやさしい明かりが疲れた体を癒してくれそうです。また、組子細工のテーブルやイスは西洋のレースのような可憐な美しさがあるため洋室に置いてもお洒落です。

組子コースター 桔梗亀甲

熟練した職人の技で作られている組子は、日本人の技術力の高さを見せてくれます。先人達によって築かれてきた光と影が織り成す万華鏡のような美しい幾何学模様は見る人の心を捉えて離さないでしょう。多くの人に知ってもらい、その技術を後世まで残していきたいものです。

日本の伝統文化!畳(たたみ)のある生活と進化

(noren Ichiro)


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