日本の伝統工芸品! 大館曲げわっぱの進化(秋田県)


海外でも健康に良く経済的な日本の弁当文化が広がり、様々な形のお弁当箱が販売され、可愛らしいキャラクターをモチーフにしたキャラ弁を作る人も出てきましたが、日本の伝統工芸である「曲げわっぱ」にも注目が集まっています。

 

 

曲げわっぱとは

近年の弁当ブームによって注目を集めている「曲げわっぱ」は、スギやヒノキなどを薄く削ったものを円形に曲げて作った容器です。弁当箱が有名ですが、その他におひつや食器もあります。日本では曲物(まげもの)と呼ばれる薄く削った木材を曲げて作る容器を古代から日用品として使ってきました。日本全国に工芸品や特産品として曲物を作っている地域は多くありますが、特に秋田県大館市の「大館曲げわっぱ」は曲物でただ1つ、国の伝統工芸品指定を受けています。

 

大館曲げわっぱの歴史

今からおよそ400年前の江戸時代から大館では曲げわっぱの生産が盛んになったと言われています。当時大館を統治していた佐竹家の家中は冷水害により生活が困窮していました。そこで領内に豊富にあった天然秋田杉に着目し、それを利用した曲物を内職として作ることを推奨したのが大館曲げわっぱの始まりと言われています。

伝統的な技法は職人たちの手により江戸時代から現代にいたるまで脈々と受け継がれてきました。大館曲げわっぱは秋田音頭の歌詞にも秋田名物として登場するなど、地域の特産品として親しまれていきます。1980年には国の伝統工芸品に指定され人気を集めましたが、それ以降はプラスチック製品の台頭などによりしばらくの間低迷が続いていました。しかし、現在ではその価値が見直され、従来の弁当箱やおひつだけでなくお洒落な食器やインテリアとしても国内外から再び注目を集め始めています。

曲げわっぱ

 

大館曲げわっぱの製法

丸太を割り、製材します。材料として使われる木は樹齢200年以上の天然秋田杉です。この天然秋田杉の丸太中から、節がなく、きれいに柾目が出る部分だけを使います。丸太の中心に向かって挽くと現われる柾目は年輪がほぼ並行で均等に並び、反りや割れに強い性質を持ちます。しかし高樹齢で直径も太い大木からわずかな量しか取ることができません。製品の大きさに合わせて薄く剥いだら一晩水に浸け、熱湯につけてやわらかくします。こうすることで折れにくくなります。それを製品のサイズや形に合わせたゴロと呼ばれる道具に巻きつけて丸みをつけます。重なる部分を仮止めして自然乾燥させ、乾燥後に接着剤で止めた後、とじ穴を開けてなめした山桜の皮で縫いとめます。仕上げに蓋板もしくは底板をいれ、接着すると出来上がりです。その後漆やウレタンで加工する物もあります。

 

大館曲げわっぱの特徴

大館曲げわっぱの一番の特徴は原材料となる天然秋田杉です。秋田杉は日本三大美林のひとつでもあり、天然の物は間伐を行って育てた人工林杉と異なりゆっくりと成長します。それにより、年輪の幅が狭く、強度のある材木になります。曲げわっぱに使われている木は樹齢200年以上の物で、細やかで美しい木目に優れた耐久性を持ち合わせています。

曲げわっぱを使うメリットで一番に挙げられることが、ごはんの美味しさです。木がごはんの水分を適度に吸収することで、冷えても美味しさを保ってくれます。杉の持つ殺菌作用によって食べ物が傷みづらい点も良いところでしょう。デメリットとしては、密封性が弱いため汁物を入れるのには向いていないこと、湿気に弱くプラスチック製の弁当箱よりも手入れが必要な点にあります。

 

生活スタイルに合わせて進化する曲げわっぱ

従来の曲げわっぱは弁当箱やおひつといったイメージでしたが、現代の生活様式に合わせたお洒落な製品も多く誕生しています。上品な木目を活かしたコーヒーカップは木ならではの軽さに加え、熱を通しにくいという機能性も兼ね備えています。天然秋田杉の香りがほのかに移る徳利とぐい飲みのセットは日本酒をお洒落に美味しく楽しめる一品です。現代の食生活に合わせた使いやすい食器にと、曲げわっぱをパン皿やバターケースにした商品もあります。寒さが厳しい秋田で育った天然秋田杉を利用しているため冷蔵庫に入れても割れず、バターを適度な固さに保つそうです。

食器だけでなく、木の持つ温かさや穏やかさを活かした曲げわっぱはランプシェードになどのインテリアとしても存在感を示します。現代的なデザインと伝統工芸、木の魅力が合わさる事で曲げわっぱの新たな可能性が広がります。

 

最近の日本では高額で大きな贅沢をするよりも、普段の生活の中で少しだけ奮発して好きな物を楽しむ「プチ贅沢」の流行が続いています。毎日の仕事の中でちょっと良い物、本格的な物を使って一息つくことができる曲げわっぱのお弁当はまさに「プチ贅沢」と呼べるでしょう。


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