日本の伝統工芸品”漆器”!輪島塗の歴史と進化(石川県)


木や紙などに漆を塗り重ねて作る漆器のことを英語でjapanと表します。これは大航海時代のヨーロッパで中国製の磁器chinaと呼んで好まれていたことと同様に、日本の漆器もまたヨーロッパ人から見て美しく魅力的なものに映ったことから日本を代表するものとして漆器をjapanと呼んだのではないかと言われています。

漆器の中でも、石川県輪島市で作られる輪島塗は美しさと丈夫さで全国にその名を知られています。能登半島にある人口3万人ほどの小さな港町で作られている伝統工芸「輪島塗」の歴史を紹介します。

 

輪島塗の歴史

日本では大変古くから漆を生活に役立ててきました。輪島と同じ能登半島の三引遺跡からは約6800年前の漆器が見つかっており、輪島でも平安時代の遺跡から漆製品が出土しています。輪島塗の技術が確立したのは1660年頃と考えられ、日本海に面した地の利を生かして販路を拡大し、陸路でも行商が売り歩くことで全国に広がりました。丈夫な輪島塗は評判となり、その後は沈金や蒔絵といった技術を取り入れながらより美しく豪華な仕上がりになっていきます。

 

輪島塗の特徴

輪島塗は日本に数ある漆器製品の中でも最も美しく丈夫であると言われています。生地作りにかける時間はおよそ2年、漆を塗る回数は75回から100回とも言われ、全工程において手作りで生産されています。輪島塗と他の産地で作られる漆器製品の違いは、輪島塗では木地に布を貼り、その上から輪島産の珪藻土(けいそうど)を焼いて粉末にした「地の子」と漆を混ぜて塗り重ねる点にあります。珪藻土の微細な穴の中に漆が染み込むことで馴染むことで変形しにくく熱に強い漆器が出来上がります。完成までの工程は100以上あり、また実用品ということもあって効率良く作業をするため木地の製作や塗りの工程も分業されています。

 

輪島塗で使われる美しい装飾

輪島塗は丈夫さだけでなく、さまざまな装飾が施された美しさもまた魅力になります。

呂色(ろいろ)

美しい艶を出し、最終的に仕上げる工程です。上塗りされた製品に漆を刷り込みながら磨きあげ、鏡のような透明感のある艶を生み出します。

蒔絵(まきえ)

漆で模様を描いた上から金銀粉を蒔きつけて模様を描きます。蒔絵は千年以上も前から伝わる装飾技法です。

蒔絵(まきえ)

蒔絵(まきえ)

沈金(ちんきん)

漆器の表面に模様を彫り、溝に金箔や金粉を入れて装飾する技法です。色を付けた漆や金・銀を溝に詰めてから平坦に研いだ象嵌技法などもあります。

沈金(ちんきん)

沈金(ちんきん)

 

現在も続く輪島塗の進化

輪島塗といえば黒と赤のイメージが強い人も多いでしょう。漆黒という言葉があるように、艶のある深い黒は上品さと落ち着きがあり根強い人気があります。一方、赤は日本で昔から魔除けの色として使われてきました。しかし、漆に顔料を混ぜる事で様々な色を作り出すことができ、現在ではカラフルで可愛らしい輪島塗の作品も見られます。作品も従来からある器や重箱、箸など伝統的なものばかりでなく、携帯電話やゴルフクラブ、アクセサリーなどにも使われています。

輪島塗といえば高級品といったイメージがあるかもしれませんが、元々はその堅牢(けんろう)を誇った日用品です。生活に取り入れてみると、その使い心地の良さや長持ちする丈夫さに驚かされるでしょう。普段使いの品として輪島塗を手に取ってはいかがでしょうか。

(noren Ichiro)

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