日本の建築美 宮大工の仕事


日本の建築物は世界的にも有名な観光名所として取り上げられているものが多く、特にお寺や神社といった宗教関連の建築物が非常に多く残っています。京都や東京には千年以上残っているお寺や神社が現在も残されており、観光スポットとして高い人気を集めています。そうした建築物の多くは宮大工と呼ばれる専門の大工が手がけており、木や紙といった一見すると長持ちしそうには思えない素材から、他では見られない特殊な技法を使うことで、長く残り続ける建築物を数多く生み出しています。

宮大工が使う素材

宮大工は住宅など暮らしに関係する建築物を手がける大工とは異なり、お寺や神社といった建築物のみを手がけます。それらの建物には現在主流の素材である金属などは一切使わず、新たに作る際も昔ながらの紙や木といった素材を使わなければなりません。金属を使わないという点には非常に徹底しており、骨組みや柱はもちろん、木を止めるのに使う釘などの金属も一切使っておらず、特殊な技術によって木を固定する方法を編み出しています。

宮大工の工法

宮大工の仕事の大きな特徴は、木だけを使って建物を作り出す木組み工法と呼ばれる工法を活用する点にあります。一般的な建物は固定や補強のために金属を使っていますが、宮大工はパズルのように木同士をはめ込めるように加工を施し、金属などを使わなくても木材同士を固定できるように特殊な加工を施します。このとき温度や湿度による木の変形、かかる力の強さや方向の変化などに合わせて加工する場所や使用する木を変更したりと、長年の積み重ねによって得られた技術と経験を駆使することから、宮大工の加工は他の大工では行えないといわれています。

美しい木工彫刻

宮大工が行う作業は、建築だけではなく、建物の装飾にまで及びます。神社やお寺を間近で見るとわかりますが、その多くは木材を加工した彫刻が多く彫られており、見る人に強い印象を与えます。他国の建築家が芸術面でも大きな才能を発揮しているように、宮大工もお寺や神社の彫刻を手がけており、一つ一つ丁寧に彫られた彫刻はどれも繊細な作りをしています。それらの彫刻のデザインなどは建築家のセンスも現れており、「わびさび」を基調とした質素なものを心がけたものもあれば、とにかく派手な見た目をしたものもあり、そうした違いを比較するのも面白いです。

古くなった建物の修繕

宮大工の仕事は新しいお寺や神社を建てるだけでなく、古くなったお寺や神社の修復も含まれます。宮大工が手がけた建物は日本の気候に合っているため、非常に長く保つといわれていますが、それでも雨風にさらされた木材は弱ってきてしまうので、定期的に古くなった木材を入れ替えるなど、修繕作業を行う必要があります。有名なお寺や神社の修繕作業を行うのは、ごく一部の優秀な宮大工にのみ認められる名誉といわれており、それほどの実力を身につけるには、数十年の修行が必要になります。

道具へのこだわり

宮大工の仕事の中でも、特に重要な仕事といわれているのが道具のお手入れです。常日頃変化する木の状態に合わせて作業を行う必要がある宮大工の仕事は、道具の品質を可能な限り維持しておかなければこなすことが出来ません。そのため宮大工が一番最初に習うことも道具の手入れの仕方といわれており、木を掘るためのノミや木の表面を削るためのカンナなど、様々な刃物の研ぎ方を学んでいきます。長年の経験を積んだ宮大工が研いだカンナで木を削ると、1ミリにも満たない薄さの木くずが出るといわれており、木の表面も顔が映る様な美しさになります。

仕事の期間にムラが出ることも

宮大工の仕事は時間がかかりやすいです。すべて木を使い、彫刻なども手がけたりと、手を抜くことが出来ない箇所が非常に多く、短いものでも2年間は工事に費やさなければなりませんし、有名なお寺の修繕作業になると、10年以上は現地に留まり続けて作業する必要があります。ですが10年以上もの作業が必要な建物の修繕を行うのはごく一部の宮大工に留まるので、それ以外の宮大工の中には仕事が来なくなる時期もあるそうです。宮大工が働く職場には、神社やお寺以外の建物は一切建てないという掟があるため、一流の宮大工であっても、仕事が無い時期はお寺で使っているお鍋の修理をしていたという方もいたそうです。

技術を伝えるために

宮大工の建築以外の大事な仕事は、その技術を若い世代に伝えることにあります。現在のようなマニュアルを用いた指導は一切行わず、現場に出て先輩の仕事を間近で見ながら仕事を覚える昔ながらの方法で技術を伝えているため、宮大工として一人前になるまでには非常に長い時間が必要となります。そのため現在宮大工として働いている方は100人にも満たないといわれており、それ以外の若い見習いの宮大工が、その100人にも満たない一人前の宮大工を目指して今も修行を続けています。

日本の古い建築物は、現在も続く宮大工の高い技術力によって保たれており、海外でも高く評価されています。日本への観光を予定しているのであれば、ぜひ近くのお寺や神社に足を運んで、宮大工の努力の結晶に実際に目を向けてみてください。

人気沸騰!日本庭園、枯山水(カレサンスイ)の歴史

(noren Ichiro)


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