
「源氏物語」は約千年前に紫式部によって書かれた、長編恋愛小説です。絶世の美男子で、あらゆる才能に恵まれた、天皇の御子である光源氏を主人公としています。とても長く登場人物も多いのですが、大体のあらすじを頭に入れておくと、理解がしやすくなります。ここでは光源氏が愛したあまたの女君の中から代表的な九人を選び、源氏との関わりを紹介します。
女たらしの天才 若き源氏のプレイボーイ生活
幼少時に生母を失った源氏は、父帝の美しい妃藤壷の宮に母の面影を見て憧れ慕う。成人して後も藤壷への想いは一層つのり、藤壷に似た女性を求めて、数々の女性遍歴を重ねる。若き源氏の恋の冒険は止まらない。
⒈母に生き写し、永遠の恋人・・・父桐壷帝の妃藤壷(ふじつぼ)
生母に生き写しと言われる、美しい藤壷の宮を源氏は幼い頃から慕っていた。成長してからはますます藤壷への恋情を抑えられず、とうとう源氏は藤壷との密通事件をおこす。道ならぬ恋に落ちた藤壷は源氏の子を出産、罪の意識におののきながらも、桐壷帝の子として養育に心を配る。
⒉プライドの高い貴婦人・・・怨念の人、六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)
元東宮の未亡人という高貴な身分で、美しく品がある。源氏より七歳も年上で大変なインテリ。若い源氏が立派な洗練された男になったのは、この六条御息所の影響が大きいと思われる。プライドの高さから嫉妬心が凄まじく、魂が体から抜け出し、生霊として源氏の妻や愛人を呪い殺す。
⒊最初の結婚、冷えた夫婦生活・・・正妻葵の上(あおいのうえ)
元服した源氏は四歳年上の左大臣の娘、葵の上と結婚する。気位の高い取り澄ました姫に源氏は親しめず、左大臣家に通う事もめったにない。やがて二人の間に男の子が誕生するが、出産後、葵の上は六条御息所の生霊に取りつかれ、亡くなる。
⒋行きずりの恋の相手・・・中流の女性夕顔(ゆうがお)
わびしい場所でふと出逢った素性の知れない女性夕顔。魅惑的な夕顔に源氏はのめり込み、自分の身分を明かすことなく逢瀬を楽しむ。しかし、ある真夜中に六条の御息所の生霊が現れ、あわれ夕顔は、はかなく息絶える。 従順でなよなよと可愛らしいタイプ。夕顔を好む男性ファンも多い。
心あてに それかとぞ見る白露の 光そへたる 夕顔の花
(白露の光を添えた夕顔の花のようなお姿は、もしかしたら光源氏の君では・・・)
5 不美人な愛人・・・純朴な末摘花(すえつむはな)
没落した宮家の屋敷に美しい姫が住んでいるとの、噂を聞いた源氏は妄想の恋心を燃やす。何か反応のない不思議な姫であると思いながら末摘花と一晩を過ごしたが・・・。朝の明るい光の中で末摘花の素顔を見た源氏はあまりの容貌に驚く。テレビドラマでは泉ピン子が演じたことがある。
⒍最愛の妻、理想の女性・・・気立てのよい紫の上(むらさきのうえ)《若紫》
十歳の若紫に出会った源氏は、藤壷によく似たこの美少女に心ひかれる。愛らしい若紫を引き取って育てた源氏は、立派に成長した紫の上と結婚する。源氏の女性関係に悩みながらも、事実上の正妻として幸せな結婚生活を送る。しかし、晩年は源氏の裏切りにより悲しみのうちに亡くなる。
⒎危険な恋の相手・・・不良少女朧月夜(おぼろづきよ)
桜の宴の夜に出会ったのが美少女、朧月夜である。源氏の政敵右大臣の娘で、東宮に入内(じゅだい)予定の大切な姫君であった。朧月夜は高貴な姫であるが明るく奔放(ほんぽう)、二人は不良同志ゆえ意気投合し、危険な恋を楽しむ。しかし密会は露見し、源氏は右大臣家の激しい怒りを買い、京を追われることになる。
照りもせず 曇りもはてぬ 春の夜の 朧月夜に 似るものぞなき
(さやかに照るのでもなく、といって全く曇ってしまうのでもない、春の夜の朧月の美しさに及ぶものはない)
挫折から栄光へ、光源氏の栄耀栄華(えいようえいが)の人生
朧月夜とのスキャンダルのため、須磨に流され悲運を嘆く源氏であるが、現地で明石の上と結ばれ、将来后の身分となる女の子が生まれる。やがて罪を許されて京に帰った源氏の運命は大きく花開く。六条院という壮大な邸にかつての愛人達を住まわせ、地位も登りつめ、栄華を極める。
⒏須磨で出会った優れた女性・・・賢夫人明石の君(あかしのきみ)
明石の入道という変わり者の娘で、田舎育ちではあるが立派な教育を受け、美しく上品な明石の君。最愛の妻紫の上を都に残していながら、源氏は明石の君と結ばれる。二人の間には後に中宮となる姫君が生まれるが、明石の君は身分をわきまえ謙虚さを失わない。思慮分別のある女性である。
⒐最後の結婚相手・・・身分の高い幼な妻女三宮(おんなさんのみや)
源氏も中年期を迎え、愛妻紫の上と穏やかな日々を過ごしていた。ところがそこに、親子ほども歳の離れた女三宮との縁談が持ち上がる。断る事も出来たが源氏は承諾してしまう。迎えた皇女の妻は心も体もまるで子供で頼りなく、紫の上の素晴らしさを思い、源氏はこの結婚を後悔する。
紫の上との永遠の別れ 光源氏の孤独な晩年
本妻の立場を追われることになった紫の上の悲しみは深く、病がちとなる。
さらに若い貴族柏木が女三宮に思いを寄せ、密通事件を起こし、女三宮は不義の子、薫を生む。源氏は若い頃自分が犯した罪を思う。紫の上は出家の希望が叶わぬうちに亡くなってしまう。紫の上を失った源氏の悲嘆は深い。過去に源氏の愛した女性達の多くは仏門に入っており、源氏はひとり孤独の中に取り残される。
(noren Rumiko)
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