
東京から一時間ほどで行くことができ、神社仏閣(じんじゃぶっかく)などの旧跡の他、山や海などの自然にも囲まれている美しい街が鎌倉です。国内外から毎年およそ2千万人の観光客が訪れる古都・鎌倉の歴史とその魅力について紹介します。
鎌倉の歴史
鎌倉近郊に人が住み始めた歴史は非常に古く、今から1万年以上前の旧石器時代には人が暮らしていたと考えられます。常楽寺(じょうらくじ)の裏手にある粟船山(ぞくせんざん)からはその時代の石器が発掘されています。
鎌倉といえば鎌倉幕府を思い浮かべる人も多いでしょう。1192年に源頼朝が征夷大将軍になり、武士による初めての政治が始まったことは歴史の教科書でもお馴染みです。しかし、頼朝が幕府を開く以前より源氏と鎌倉には深いつながりがありました。
平安時代後期の1063年、河内国(現在の大阪府羽曳野市)を本拠地としていた源頼義が戦に勝った際に、源氏の氏神(うじがみ)であった京都の岩清水八幡宮より神様の神霊を分け、鎌倉の鶴岡八幡宮の社殿をつくり、そこへ移しました。源頼朝の父、義朝(よしとも)も鎌倉で暮らしており、源頼朝の死後、北条政子(ほうじょうまさこ)によって創建された寿福寺(じゅふくじ)のあたりに住居を構えていたそうです。
鎌倉幕府が開かれ頼朝によって幕府の体勢や都市づくりが完成し、幕府が全盛期を迎えた1230年頃になると鎌倉の街は政治や文化、外交などで日本の中心地として栄えます。源氏が途絶えた後も、頼朝の妻の北条政子の実家である北条氏の支配化に置かれその活気は衰えませんでした。中国の宗との交易も盛んに行っており、禅宗や仏像彫刻など様々な中国文化が入ってきたことで、鎌倉大仏や建長寺(けんちょうじ)、円覚寺(えんかくじ)などの禅寺が建立されたのもこの時代です。
しかし室町時代に入って幕府と鎌倉府が対立するようになると度々“戦”が起こり、鎌倉府のリーダーであった足利成氏(あしかがしげうじ)が敗れて以降、鎌倉の勢いは休息に衰えていきます。
平和な江戸時代に入ると、鎌倉は観光地としての脚光を浴び始めます。テレビドラマの水戸黄門としてもお馴染みの徳川光圀(みつくに)も、1685年に自身が鎌倉旅行に出向いた際に見たり聞いたりしたことを基にした『新編鎌倉志』を刊行し、後年になって数多くの鎌倉ガイドブックに引用されています。
近代に入って、1889年に横須賀線が開通すると都心に近いということに交通の便の良さも加わって住宅地としても注目されるようになります。また、海や山といった自然も多いことから海水浴客や登山客からも人気が出ました。昭和に入ると、温暖な気候や歴史・文化が息づく街として作家や文人にも愛されました。中でも川端康成は縁深く「舞姫」をはじめ「山の音」「岩に菊」「過去」「十二舞姫」など鎌倉エリアが舞台となっています。現在でも映画や小説、マンガなどの舞台として数多くの作品がつくられています。
鎌倉の名所・鎌倉大仏や明月院など
鎌倉大仏のある高徳院(こうとくいん)
鎌倉といえば大仏を思い浮かべるという人も多いかと思います。大仏は高徳院というお寺の中にありますが、実はこの大仏がどのような経緯でできたものなのか、完成した詳しい年代などは明確に記述された文献がないため、わかっていないことも多くあります。ただはっきりしていることは、大仏が造られたのは鎌倉時代だということです。鎌倉大仏の高さは台座を含めて18.03mにもなり、以前はこの大仏を覆う大仏殿があったことが発掘調査によってわかっています。しかし大仏殿については何度も倒壊している記述が残されており、1369年の倒壊以降は大仏殿が再建された形跡は見当たらなかったそうです。雨風にさらされて傷んでしまった大仏の修復作業に取り掛かったのは、江戸時代中期に入ってからのことでした。鎌倉大仏を実際にその目で見たら、ぜひ大仏様の胎内に入ってみましょう。20円で中を見ることができ、階段をのぼるとおへそのあたりまで行くことができます。他ではなかなかできない貴重な体験になりますよ。
紫陽花で有名な明月院(めいげついん)の悟りの窓
鎌倉周辺は梅雨の時期になれば鮮やかな紫陽花(アジサイ)の花が線路沿いに咲き誇り、撮影スポットにもなっています。特に有名なのがあじさい寺と呼ばれている明月院です。明月院とは、神奈川県鎌倉市にある臨済宗建長寺派の寺院。開基は南北朝時代から室町時代まで活躍した上杉憲方です。本堂の中には「悟りの窓」という円形の窓があり、禅(ぜん)や円通(えんつう)の心を表し、その窓から四季折々の庭園を眺めることができます。
またのんびりと走る江ノ島電鉄に乗れば美しい海や山、どこか懐かしい感じのする住宅街などの景色を楽しむことができます。時間をかけてじっくりと鎌倉の魅力を堪能してください。
(noren Ichiro)
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