浮世絵は世界最古のポップアート!?


日本国内で独自の進化を遂げ、江戸時代の末期に海外でも注目されるようになった浮世絵は、日本の芸術文化の代表的な作品として広く知られています。浮世絵の特徴は、高尚な芸術作品として作られたものだけではなく、庶民の間で広まったポップアートの一種として発展を遂げた点にあり、現在非常に貴重な作品とされるものの中には、当時としてはそれほど高価な作品として扱われていなかったものも少なくありません。世界でも注目を集めるようになった浮世絵というポップアートは、どのように繁栄し、世界中に広まったのでしょうか。

浮世絵の歴史

浮世絵の歴史が始まったのは17世紀後半頃といわれており、当時から浮世絵の基本的な形式である、木版による作品作りが行われています。浮世という名称は当時の世相や風俗などの考え方を肯定的に捉えたという意味を持っており、当時の暮らしを鮮明に描くための絵としての発展を遂げることとなります。そうした経緯もあって、直接紙に筆などで描く日本画とは異なり、大量生産が可能な木版による印刷が出来る浮世絵は、大衆向け娯楽の一つとして広く知れ渡るようになりました。

浮世絵の特徴

浮世絵の大きな特徴は、見えないものを想像で補完して描いたり、誇張したいところを本来の形から崩したりという具合に、デフォルメを積極的に取り入れた点にあります。そのため海外で主流だった写実的な絵とはまったく異なっています。一見するとデッサンが大きく狂っていて本来の形とは大きくかけ離れたデザインであっても、見る人に強いインパクトを与えます。海外で人気を集めたのも、そうした自分たちには無いものを強く感じることが出来たのが、理由の一つだったのではないでしょうか。

当時の浮世絵の使われ方

ごく一部の人にしか触れられなかった日本画とは異なり、浮世絵は大衆文化に深く根付いた庶民の絵として広まりました。版画による複製が容易に行えたことから、歌舞伎の宣伝用のポスターとして大量に刷られたり、本の挿絵などにも広く活用されたりと、様々な形で浮世絵を目にすることが出来ました。多くの作品が出回るようになるにつれ、印刷技術も発達します。はじめは黒一色だったものが複数の色を組み合わせた、カラー作品も数多く出回るようになりました。また、浮世絵を描く人が増えたことで人気の絵師も登場します。こうして、人々の暮らしの中で浮世絵は着実に広まり、日本を代表する文化として成長していきました。

浮世絵が広まるきっかけ

浮世絵が世界に広まるようきっかけは、日本がヨーロッパと行っていた貿易がきっかけでした。当時の日本は海外に陶器などを輸出していましたが、そのとき陶器の包み紙代わりに使われていた浮世絵が、陶器を輸入した人たちの目に留まり、少しずつ広まったと言われています。そのとき使われていた浮世絵は、日本人にしてみれば、もう何回も見て飽きた作品だったり、とっくの昔に終わった歌舞伎の宣伝だったりと、半ば興味を失ったものだったものだったので、物によってはただ同然で渡しており、それが海外で多くの人に広まるきっかけになったといわれています。

世界最古のポップアート?

現在世界中で見られる広告などは、より多くの人の目に留まるよう、様々な工夫がなされています。そうした一般大衆に向けた作品であることに特化した作品がポップアートと定義され、芸術作品の一つとして注目を集めるようになったのは1960年ごろといわれています。そのことを考えると、数百年前から大衆文化の一つとして発展し、文化の発展にも影響した浮世絵の存在は、世界最古のポップアートといっても良いのかもしれません。

浮世絵が世界中で注目されるようになり、世界的にも有名な画家に影響を与えるなど、日本に留まらず、世界各国の芸術文化にも影響を与えてからも、日本の浮世絵は多くの方の人気を集めています。有名な浮世絵画家の作品を集めた画集は数多く販売されていますし、博物館や美術館などでも、多くの作品を目にすることが出来ます。今まで浮世絵を見たことが無かったという方は、ぜひ一度世界最古のポップアートに触れてみてください。


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