
お寺や神社、日本庭園の中で石灯籠を見かけることがあります。緑色の苔に覆われるものや雨風で石が浸食されているものからは静かな時間の流れを感じられます。電気のある現代では、灯籠に照明としての役割を求める事はほとんどありません。しかし幾多もの時代を越えて現代にも残されている灯籠には、刻まれてきた歴史と日本人には切れない風習も深く関わっています。灯籠について紹介します。
灯籠の歴史
灯籠の「灯」の字は「あかり」という意味を持ち、「籠」の字は「かご」を表します。その名の通り、灯籠は火を守るための道具として用いられてきました。寺院や庭園などにある石で造られた灯籠を石灯籠と呼び、その他に銅などの金属でできた金属灯籠があります。石灯籠の種類には寺社などでよく見られる、支柱(竿)の上に火袋と呼ばれる火を置く場所がある四角石灯籠や六角石灯籠の他、平らな石の上に火袋をそのまま置く置灯籠などがあります。元々仏具として用いられていた吊灯籠は、金属などでできており現代風のデザインでインテリアとして楽しめるものもあります。
灯籠は仏教と共に日本に伝わり、その起源は仏前に火を灯して供える献灯にあると言われています。仏教の文化から広まった灯籠は、やがて奈良時代に日本古来の神道とも結びつき(神仏習合)神社の中にも置かれるようになります。その後、平安時代に入ると室内であかりを灯す照明器具として竹や木の枠に和紙を貼った「行灯(あんどん)」や手で持ち運びができる「提灯(ちょうちん)」など用途に合わせた道具へ分化します。また、観賞用として日本庭園でも灯籠が用いられるようにもなりました。
日本にある様々な灯籠
日本で一番古い灯籠
現在、日本に残されている最古の灯籠は奈良県の當麻寺(たいまでら)にある石灯籠で、奈良時代前期に作られたとみられています。高さは227cm、石はかなり風化していますがしっかりと形を保っており、重要文化財にも指定されています。
(所在地:奈良県葛城市當麻1263)
日本で一番高い灯籠
日本で一番高い灯籠は、香川県にある高灯籠で27.6mの高さです。1865年に完成した高灯籠は、石を積んだ土台の上に木造で灯台部分が作られています。古くから海上交通の守り神であり「こんぴらさん」の愛称で親しまれていた金刀比羅宮(ことひらぐう)の近くにあり、瀬戸内海を航海する人々の目印として使われていました。国の重要有形民俗文化財にも指定されています。
(所在地:香川県仲多度郡琴平町361)
日本のお盆と灯籠(山鹿灯籠まつり)
日本では毎年お盆に死者の魂があの世からこの世へ戻ってくるとされ、お盆の最終日には迎え入れた死者の魂を再びあの世へ送り出すために「送り火」を行う風習があります。送り火の形は様々で、家の玄関先や庭で行われるものの他に、京都の五山送り火のように山を焼くものがあります。その中で、海や川が近い地域では木材や紙を使って作った小型の灯籠に火を灯して水に浮かべる「灯籠流し」を行うところもあります。水辺に灯籠の炎が揺れ、幻想的な雰囲気を映し出す灯籠流しの様子は日本の夏の風景の中でもとりわけ美しいものです。
灯籠流しの他にも、毎年8月15・16日に熊本県山鹿市では“山鹿灯籠まつり”が開催されています。このお祭のハイライトは、最終日の16日夕方から行われる「千人灯籠踊り」です。あかりを灯した灯籠を頭にのせた千人の女性たちが輪になって踊る姿はまさに圧巻。大迫力の中に凛とした美しさが漂う空間に目を奪われます。女性が頭にのせている豪華な金色の灯籠は一見重そうに見えますが、材料は和紙とわずかな糊(のり)しか使われておらず、細かな部分まで中が空洞になっているため非常に軽い特徴があります。この「山鹿灯籠」は国の伝統工芸品に認定され、灯籠師と呼ばれる熟練した腕を持つ職人によってひとつひとつ作られています。15日には大宮神社の境内での奉納踊りや花火大会も行われるので、夏の旅行に灯籠祭を楽しんでみてはいかがでしょうか。
◼️2016年 山鹿(やまが)灯籠まつり《熊本県山鹿市》
◎8月15日
奉納灯籠 (午後/各町内の街かど)
奉納灯籠踊り (18:30~/大宮神社)
花火大会 (20:00~21:00/菊池川河川敷 ※雨天の場合は17日に順延)
灯籠踊り (18:30~23:00/おまつり広場)
◎8月16日
景行天皇の奉迎儀式 (20:05~/菊池川河畔)
たいまつ行列 (20:35~21:05/菊池川→市内→山鹿小学校グラウンド)
千人灯籠踊り (第1部 18:45~20:15 第2部 21:00~22:00/どちらも山鹿小学校グラウンド)
上がり灯籠 (22:00~各町内→大宮神社)
◎問合せ
山鹿灯籠まつり実行委員会(山鹿市商工観光課)
電話:0968-43-1579
(noren Ichiro)
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