人気沸騰!日本庭園、枯山水(カレサンスイ)の歴史


日本の美意識の1つでもある「わび・さび」を感じられる枯山水日本庭園は、その静かな美しさから国内外で人気があります。しかし最近では庭の枯山水の人気もさることながら、枯山水を作るゲームまで登場したことが話題となっています。枯山水の歴史と現在のブームについて紹介します。

 

枯山水とはどんなもの?

日本の庭園の様式で、水を使わずに石と砂だけで景色を表現する庭が枯山水です。枯山水が登場する以前は庭園をつくるために水源を確保し、水を引くための遣水を造る必要がありました。しかし枯山水の普及によって水源が確保できない場所にも造園できるようになります。

枯山水は一般的に、白砂で水面を表し、所々に配置される石は山を表現しています。本物の水が溜められた池や遣水などは存在しません。白砂には箒目(ほうきめ)と呼ばれる、水の流れや波紋を表すための細い線が描かれています。また、実際に水が無くても橋がかけられている場所もあり、特にその下には水があると強調しています。この砂でできた水面の文様はそのままにしておくと消えて無くなるため1週間~10日置きくらいに修行僧によって引き直されます。白砂以外にも、水や山に見立てられれば良いので、赤砂を利用している庭や、石だけで作られた庭園も枯山水と呼びます。

大乗仏教の流れを汲んだ禅宗の寺に多く見られ、の広がりと共に枯山水式庭園も普及しました。派手さやきらびやかさを求めない禅宗の教えでは枯山水を座敷から眺め、瞑想座禅を行うためにも使われていたそうです。

枯山水1

枯山水の歴史

枯山水という言葉が庭園を造る際の専門用語として初めて登場したのは、平安時代に編集された『作庭記』です。それまでの庭といえば、自然の山や水のある景色を人工的に庭に作り出した池泉庭園(ちせんていえん)が主でした。枯山水は最初の頃は池泉庭園の一部として、その一画に造られていましたが、山の斜面のような水を引くことが困難な場所や、面積が限られたところにも庭を造ろうとした時に、水以外のもので水を表す枯山水が採用されることになったのです。室町時代に入ると禅宗の広がりと共に、質素で抽象性の高い枯山水には目で見て理解するだけでなく、精神的にもその世界を理解することが求められるようになります。

 

枯山水の石の数

枯山水の表現は非常に抽象的で、石や砂などの簡素な材料だけで静かな美しい世界を作り上げています。そこには自然に対する日本人の美意識が表れています。

枯山水に使われる石の数は15個が多く、7個の場合もあります。中国の昔の思想では奇数を陽数と言い、縁起の良い数字としていました。今でも日本では、男児は数え年で3才と5才、女児は3才と7歳の年に子供の成長を祝いお参りをする七五三という儀式が行われています。7も15も奇数ですが、15は「七・五・三」を足した数なので縁起の良い、完全を表す数字と考えられてきました。それらの思想の影響もあり、枯山水で使われている石は15や7が多いとされています。

 

枯山水で有名な寺院

枯山水には禅宗の発達と室町文化が深く関わっているため、寺院の多くはその文化の発祥地である京都にあります。見所ある美しい京都の枯山水庭園を紹介します。

龍安寺方丈庭園

龍安寺は室町時代に細川勝元により創建され、ユネスコの世界遺産にも登録されています。その一番の見所が日本を代表する枯山水庭園で、毎年国内外から多くの観光客が訪れます。庭園の大きさは幅22メートル、奥行き10メートルほどで、白砂が敷き詰められた中に大小15個の石が置かれています。この15個の石は、どの角度から見ても必ず1つの石が他の石に隠れ、14個しか見えないように配置されています。東洋では「15」という数字は完全という意味を持つとされ、人間の目では14しか見えないので、残るひとつは心の目で見なさいというメッセージがあると言われています。

枯山水 龍安寺

建仁寺

建仁寺は鎌倉時代に建立された京都最古の禅寺で、俵屋宗達の「風神雷神図屏風」をはじめとした数々の美術品があることからも有名です。大雄苑(だいおうえん)と呼ばれる庭園は幅30メートル、奥行き15メートルほどの広さがあり大らかさを感じられます。他にも、○△□乃庭はその名前の通り○△□の形を見ることが出来るユニークな庭です。

※○△□乃庭(まるさんかくしかくのにわ):密教の六大思想(地水火風空識)を地(□)、水(○)、火(△)で象徴したものといわれる。

枯山水 建仁寺

枯山水のボードゲームが人気?

少し変わった話題になりますが、最近日本では枯山水を作って遊ぶボードゲームがインターネットを中心に話題となりました。プレイヤーが禅僧になり、砂紋の描かれたパネルや石を集めて庭園を作り、その美しさを競うものです。苔のついたパネルや石の種類によって獲得ポイントが異なり、砂紋が美しい渦を描けば加点、隣り合うパネルと砂の模様が繋がらなかったら減点されるなど細かなルールがあり、最初に配られる名庭園カードの通りに石を配置すれば加点、「徳ポイント」を溜めて石を獲得するなど大人が夢中になりそうな頭を使ったゲームです。

※枯山水ゲーム:

 

日本の伝統的な文化でもある枯山水と、遊びであるゲームを結びつけるという斬新な発想でSNSを通じて人気が拡がりました。今後、このゲームを機に枯山水に興味を持つ人も増えるのではないかと新たな可能性を感じます。

(noren Ichiro)

日本の建築美 宮大工の仕事

日本の伝統・文化に影響を与えた“禅”のコト

 


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