
詩吟(しぎん)とは、漢詩や和歌などに伝統的な節をつけ、詠(うた)うものです。
※吟詠(ぎんえい)とも言う
詩吟は、若い世代にはあまり親しみのわかない人も多いと思います。「そういえば結婚式で親戚のお爺ちゃんが何か唸(うな)っていた」、「ベンセイシュクシュクなら聞いた事がある」、「吉本興業のお笑い詩吟が昔流行った」など、その程度の認識なのでしょうか。また詩吟は、何を言っているのか分からず、堅苦しく難しいイメージがあると思いますが、実は最近若い女性にも注目されている大変魅力的な日本の伝統文化(芸能)なのです。
詩吟の起源
詩吟の起源は、薩摩琵琶や筑前琵琶などの音楽に、中国より伝来した漢詩を挿入したことががはじまりと言われています。現代の詩吟の形は、江戸時代の漢学塾で、漢詩にリズムと音感をつけて詠んだ風習から来ています。幕末から明治にかけて、詩吟は大いに盛り上がりました。
有名な「ベンセイシュクシュク」とは?
それは、頼山陽(らいさんよう)の作った漢詩「川中島」から来ています。
あの有名な一騎打ちの場面「上杉謙信が馬上から武田信玄を斬り付け、信玄が軍配で防ぐ」を思い出して下さい。
『川中島(不識庵 機山を撃つの図に題す)』〜頼山陽作
※不識庵(ふしきあん)は上杉謙信、機山(きざん)は武田信玄のこと
『鞭聲粛粛夜過河』
→鞭聲粛々夜河を過る(べんせいしゅくしゅく よるかわをわたる)
『暁見千兵擁大牙』
→暁に見る千兵の大牙を擁するを(あかつきにみる せんぺいのたいがをようするを)
『遺恨十年磨一剣』
→遺恨なり十年一剣を磨き(いこんなりじゅうねん いっけんをみがき)
『流星光底逸長蛇』
→流星光底長蛇を逸す(りゅうせいこうてい ちょうだをいっす)
《意味:上杉謙信の軍は鞭(むち)の音もたてないように、静かに夜に乗じて川を渡った。夜が明けて武田方は、上杉の数千の大軍が大将の旗を中心に、突然面前に現れたのを見た。しかし、残念ながら謙信は、この十年来、一剣を磨きに磨いてきたにもかかわらず、刀光一瞬の差で、信玄を打ち逃がしてしまった。》
詩吟の効用
精神と健康の維持に役立ち、教養がつきます。
〇腹式呼吸で健康に
おなかの底から声を出すので健康に良く、ストレスを解消します。体の中にたまったドロドロした、毒のような物が大きな声と共に外に出てしまい、精神は浄化され、スッキリ爽やかな気分になるのです。
〇教養が深まる
漢詩や和歌に親しむ機会ができ、歴史上の出来事や人物にも興味が広がって、楽しみが増えます。漢字力がつくのも魅力です。
〇度胸がつく
漢詩の多くは人の心の、覚悟の深い所を表現しています。漢詩を吟ずることで、腹が据(す)わり堂々とした態度が養われます。
〇発声が良くなる
声に自信がなく、自分は滑舌(かつぜつ)が悪いとか、音痴だとか思っている人は、詩吟を習うと楽に声が出るようになります。
〇イベントに便利
冠婚葬祭などの集まりに詩吟は道具がいらず、時間を取らないので、結構な趣向として喜ばれます。
吟じてみたい有名な漢詩
『眉峨山月(かびさんげつ)の歌』〜李白(りはく)作
『峨眉山月半輪秋』
→峨眉山月 半輪の秋 (がびさんげつ はんりんのあき)
『影入平羌江水流』
→影は平羌 江水に入って流る(かげはへいきょう こうすいにいってながる)
『夜発清渓向山峡』
→夜清渓を発して 三峡に向ふ(よるせいけいをはっして さんきょうにむかふ)
『思君不見下渝州』
→君を思へども見えず 渝州に下る(きみをおもへどもみえず ゆしゅうにくだる)
《意味:峨眉山(がびさん)には半輪の月が、かかっている。その月影は、平羌(へいきょう)の江水に映えて流れていく。私は夜に清溪を出発して三峽へと向かう。もう一度、月(あなた)の姿を見たいと思っていたのに、ついに見ることができないまま、渝州へと下って行くのである。》
日本の歴史や和楽器など「和」の流行で、若い世代にも注目され出した詩吟は、全国に何百という流派がありますが、まずはインターネットなどで詩吟に触れるのが近道でしょう。
美しい詩文を吟詠するのは楽しいものです。
あなたも日本の伝統文化”詩吟”を知って、名詩を吟じてみてはいかがですか?
(noren Rumiko)
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