日本最古の国技!?『相撲』の歴史を知ろう


土俵と呼ばれるリングの上で、まわし1枚の男たちが鍛えた肉体をぶつけ合う。体が地面につくか、土俵の外に出たほうが負けという実にシンプルなルールの相撲は日本の国技として海外でも広く知られています。殴る蹴るという打撃ではなく、真っ向から体をぶつけ力比べをしたり、時には素早い切り替えしで相手を翻弄する取り組みは常に真剣勝負。すっかり日本のイメージとしても定着した相撲はどのようにして生まれ、広がっていったのか紹介します。

 

相撲のはじまり

相撲の歴史は古く、古墳時代の遺跡から出土した埴輪などにも相撲らしき取り組みが行われている姿が描かれています。日本最古の歴史書である「古事記」には、建御雷神(たけみかずちのかみ)と建御名方神(たけみなかたのかみ)の2人の神様が力くらべをした様子が記され、これが相撲の起源とされています。人間同士の取り組みでは、「日本書紀」の中で、野見宿禰(のみのすくね)と當麻蹶速(たいまのけはや)が天皇の前で力くらべをする話があります。しかし当時の力くらべは現在の相撲とは異なり、蹴り技を使って打撃を与える格闘技のようなものだったとされています。

野見宿禰と當麻蹶速の取り組み

野見宿禰と當麻蹶速の取り組み

 

その後、奈良時代に入るとルールが制定され、突く・殴る・蹴る、の三手が禁じ手となり、礼儀作法も含んだものへと変わります。天平6年(734年)7月7日には聖武天皇が日本書紀にある野見宿禰と當麻蹶速の話にちなんで七夕祭りの余興として相撲を観覧するようになりました。その後、天皇による相撲の観戦は「相撲節会(すまいのせちえ)」と呼び宮中行事として平安時代後期まで続きます。

 

武士の相撲から職業としての大相撲へ

鎌倉時代以降、相撲は武士の間で心身を鍛えることや戦いに使うために盛んに行われます。しかし、江戸時代に入り平和な時代が訪れると、相撲は武士のたしなみから庶民が娯楽として見物するものへと変わっていきます。力士たちは幕府の許可のもと、寺社を建てることや修繕するための資金を集める勧進相撲を行いながら生活していました。力士集団は江戸だけでなく京都や大坂でも結成されます。こうしてプロの力士集団が興行を行って資金を得る、現在の大相撲の原型ができあがりました。

 

明治から現代まで

明治時代に入ると江戸時代とは一変して大相撲は窮地に立たされます。明治維新と文明開化に伴い、1871年に東京府で「裸体禁止令」という法律が出されると、力士たちは罰金や鞭打ちの刑に処されました。また、江戸時代は諸藩の大名により支えられていた興行が、廃藩置県により大名の力が無くなってしまったことも相撲興行が衰退していく原因となりました。しかし、1884年に明治天皇や伊藤博文らの尽力によって天覧相撲が行われると再び息を吹き返し、大相撲は社会的に認められるようになります。その後、大相撲は幾度ものスター力士の輩出やブームを作り出しながら「国技」として日本国内だけでなく海外でも認知されるようになりました。

また、現在でも相撲は神事として行われることも珍しくなく、祭の際に五穀豊穣(ごこくほうじょう)や大漁などを祈願して相撲を行う神社もあります。

 

大相撲豆知識

力士の名前がずらりと並んだ番付表はテレビで見たことがあるも多いでしょう。この番付表は次の場所が始まる前にすべて一人の行司の手によって手書きで書かれています。番付表は江戸時代から作られており、掲示板に興行日時や出場力士の名前、似顔絵を描いて掲示されていました。やがて興行の拡大に伴い、木版印刷を使って広く宣伝するようになった流れを受け継ぎ、現在でも番付票の原本は人の手で書き、それを写真製版して印刷しています。「相撲字」と呼ばれる独特の書体で、隙間がないほどびっしりと字が書かれているのにはお客さんがぎっしりと入るようにという願いが込められています。作成にかかる時間はおよそ10日間。行司の中でも字がうまい人だけが任されているとても名誉な仕事です。

相撲字の番付表

相撲字の番付表

現在の大相撲の土俵は、土を一辺が6.7メートルの正方形に盛り、中心には16俵の勝負俵で縁を作った直径15尺(4.55メートル)の円が描かれています。また、円の東西南北には俵を1つ分外側へ出した出っ張りが設けられています。

鎌倉時代にはまだ土俵は無く、相撲は見物人が作った輪の中で行われていました。しかし、ひいきの力士を勝たせようと見物人が勝負の邪魔をするなどケンカが絶えなかったことから、江戸時代には四隅に柱を立ててリングのように囲った四角い土俵が出来上がります。その後土俵は円形になり、内円と外円のある二重土俵ができあがりましたが、昭和に入り大相撲のラジオ中継が始まった頃から次第にルールが細かく制定されるようになり、現在のような土俵の形になりました。

力士たちが力のすべてをぶつけ合う、大迫力の取り組みは一度生で観戦してみたいものです。

(noren Ichiro)

一度は生で見たい!大相撲観戦の楽しみ方

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